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最高裁判所第三小法廷 昭和35年(オ)1265号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について。

自作農創設特別措置法の規定に基づく農地の買収にあつては、当該農地が同法三条一項または五項の各号のいずれによる買収適格地であるかが買収計画樹立当時確定していることを必要とするのはいうまでもないが、右の事実は買収計画書または買収令書の記載要件ではないから、買収計画書または買収令書の記載自体によつてこれを知り得ないとしても、かかる一事によつて買収計画または買収処分が当然無効になるものではない、と解すべきである。

原判決も叙上と同趣旨に出たものであつて、その確定した事実によれば、本件買収計画は、所論農地が不在地主の小作地であるとして樹立されたというのであるから、その買収計画書および買収令書に自作農創設特別措置法三条とのみ表示されていて同条一項一号なる記載を欠く故をもつて、無効な行政処分とはいい得ないとした原審の判断は、正当であつて、所論の違法はない。論旨引用の判例は、いずれも事案を異にする本件には適切でない。

論旨は、叙上と相容れない独自の見解に立脚して原判決の違法をいうに過ぎず、採用し得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一)

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